芝スプリント重賞は年間を通じて行われます。そして、高松宮記念とスプリンターズSという2つのG1を頂点に、同じ馬が1200mという同一距離の重賞に複数回出走してくるのがスプリント界の基本です。また、頻繁に「スプリント界の新星」が叫ばれるように、スプリンターにおいて旬の時期は明らかにあり、旬の間に重賞を連勝する者、苦手な条件の重賞は大敗しても得意条件になれば人気落ちでも勝ちきる者がいます。
そこで、芝スプリント重賞(アイビスSD含む)を次のようなタイプに分ける試みをしてみました。考察するにあたり参考にした期間はサマースプリントシリーズが始まった06年以降です。
1.
スピード持続タイプ(モデル馬;カノヤザクラ・サンアディユ)
アイビスサマーダッシュ(新潟T1000m)、セントウルS(阪神T1200m)、京阪杯(京都T1200m)
2.
パワータイプ(モデル馬; シンボリグラン・ナカヤマパラダイス・サチノスイーティ)
アイビスサマーダッシュ(新潟T1000m)、CBC賞(中京T1200m)、オーシャンS(中山T1200m)
3.
キレタイプ(モデル馬;ソルジャーズソング・ファイングレイン)
高松宮記念(T1200m)、シルクロードS(京都T1200m)
4.
洋芝タイプ函館SS(函館T1200m)、キーンランドC(札幌T1200m)
※未分類
スプリンターズS(中山T1200m)、北九州記念(小倉T1200m)

上記のタイプ分けは初期段階の試みであることを断っておきます。
アイビスSDは1と2の中間タイプといえます。4の函館・札幌は洋芝ということで、他の3つのタイプとの関連性は薄いです。
もちろん、上記タイプ分けを無視して横断的に活躍する強者(スリープレスナイト、シーイズトウショウ、キンシャサノキセキなど)はわずかにいますが、多くは得意タイプの重賞で好走し、他の重賞では走らないので、有効な試みであると思っています。1200mの重賞は定期的に組まれていますので、詳しくは今後の記事で詰めていきたいと思っています。
さて、今週の北九州記念ですが、現在のところ、どのタイプに分類してよいものかがはっきりしていません。近3年において、スリープレスナイトを別格とすれば、他のスプリント重賞で馬券になった馬がいない(ゴールデンキャスト・ホーマンテキーラはセントウルSで走っていますが、改修前なので参考にしません)のが原因です。そこで消去法で考えてみますが、07年にはカノヤザクラ・サンアディユが揃って敗退していることから、
1のスピード持続タイプではありません。また、
2のパワータイプは、血統的には欧州血統がまず前面に出て(主に父系)、それを米国血統が補完し(主に母系)、その適性が芝1200mにおいて「パワー」として顕在化するタイプを考えていますが、このようなタイプの好走も近3年では見当たりません。最後に、
3のキレタイプかどうかですが、高松宮記念で圧倒的なパフォーマンスを見せる
サンデー(SS)系の激走馬も見られますが、それほど瞬発力に特化した重賞とも思えません。
まだ3年しかサンプルがないこともあり、無理にタイプ分けするのは危険かもしれません。
ただ言えることは、
1のスピード持続タイプの代表馬であるカノヤザクラは適性が低いということです。この馬は同タイプのサンアディユと走る条件が一緒です。2頭がともに好走したアイビスSD・セントウルS・京阪杯は、
スピード持続タイプレースです。一方07年の北九州記念では、同じく快足系のアストンマーチャンも含めて3頭揃って敗退しています。つまりアイビスSDで好走した、当馬のようなスピード持続タイプは特に危険ということです。
血統でも当馬を含め
ナスルーラ(NL)系×
ミスタープロスペクター(MP)系の人気3頭がすべて敗退しており、1人気必至であることからも買える要素は見当たりません。
北九州記念自体の好走血統は、展望その2において少し違った側面から考えてみたいと思います。